バーグドルフ・グッドマンの再興
【プロジェクト概要】
ニューヨーク五番街の象徴的な高級百貨店バーグドルフ・グッドマン。
老舗としての格式はある一方で、「ラグジュアリー百貨店の衰退」が業界の共通認識になりつつある状況でした。
私たちは、世界でも前例の少ない「地下化粧品フロア」の構想を軸に、歴史的建築を活かしながら売上構造とブランド体験を再定義するプロジェクトに参画しました。
【クライアントの課題】
- 化粧品・ビューティカテゴリの伸びしろが頭打ちになっていた
- 歴史的建造物のため、大胆な構造変更が難しい
- 高級感はあるものの「買いやすさ」「回遊性」が十分でなかった
特に、「高級百貨店=上層階に行くほどラグジュアリー」という固定観念が強く、地下に化粧品フロアを配置するアイデアは当初、大きな驚きをもって受け止められました。
【提供したソリューション】
1. 動線から逆算したフロア再構成
- 地下へのアプローチ動線を「不便な行き止まり」から「自然に吸い込まれる入口」へ再設計
- エントランスとエレベーターの位置関係、視線の抜け、香り・光の演出を組み合わせ、「思わず降りたくなる」導線を構築
- ペルソナごとの歩行パターンをシミュレーションし、デザインに反映
2. ブランドミックスと什器計画の最適化
- ブランドごとの「格」を際立たせつつ、客単価・回遊時間・クロスセルが最大化される並び順をプロトタイピング
- 視線の流れと歩行距離から逆算した什器の高さ・幅・配置を設計
- 将来の入れ替えや拡張を想定したモジュール型什器を提案
3. 歴史建築としての価値を高めるデザイン
- 元の建築ディテールを尊重しつつ、光・素材・色をアップデート
- 「古さ」ではなく「物語」としての歴史を感じられるデザイン言語を採用
- 外観や他フロアとの整合性を保ち、館全体のブランドストーリーを再編集
【得られた成果】
- 地下フロアという条件にもかかわらず、化粧品売上の大幅な伸長に貢献
- 小売・建築・デザイン分野の複数のアワードを受賞
- 「歴史的建築を壊さずに、高収益な旗艦店へ再生した事例」として業界関係者の視察が絶えない空間に
【日本企業への示唆】
日本の百貨店・大型テナントビルも、築年数が経ち構造制約の多いケースが増えています。
「建て替え前提の大投資」ではなく、動線・視線・心理から逆算したリノベーションだけで、売上構造を大きく変えることが可能であることを示す象徴的な案件です。
